アンザッツについて

アンザッツ とは?(F.フースラー)

執筆 山下ユウスケ

参考図書
「うたうこと」フレデリック・フースラー著
「ボーカリストのためのフースラーメソード」武田梵声 著
「Singing/Singen/うたうこと  F・フースラーは「歌声」をどの様に書いているか」
移川澄也 著

アンザッツ   オンラインレッスン

 

目次

・概要
・注意点 巷のボイトレの誤り
・声区の分離 発達
・裏声を発達させる
 ・アンザッツ 4
 ・アンザッツ 5
 ・アンザッツ 6
・地声を発達させる
・ブレンディング・レジスター 声区の融合

概要

アンザッツというのは「声をおく」という意味です。
フレデリック・フースラーという声楽教師が提唱しました。

別の言い方ではプレイスメントと言います。

声がその場所で響いているように感じることからそのように言われています。
注意点として、「響きの位置」 の章でも説明しましたが、実際にその部分が
共鳴しているわけではなく、声帯内の筋肉の反応の結果として「そのように感じる」声帯のポジションだと理解しましょう。

注意点 巷の間違いボイストレーナーたち

巷でよくある間違いとして、
声帯の閉鎖によるキンキンとした音の変化を「鼻腔共鳴」の効果によるものと豪語しているボイストレーナーがいますが、全て間違いです。

このようなボイストレーナーが発生してしまうことを懸念したリードはプレイスメントの訓練自体を全て否定しております。

私も「前頭部が響く感じ」などとプレイスメントを指示するより、「音色」でそのフォームに持っていく方が正しいと思います。

ただし、私はプレイスメントも完全否定するのではなく正しい理解の上行えば、フースラー同様効果的だと考えております。

大切なのは「音色」「喉頭の位置」「筋肉の動き」です。
「プレイスメント」「アンザッツ 」はあくまでも体感であって、
共鳴によって起こる作用ではないことを十分理解の上、練習、指導に励んでください。

声区の分離 発達

声区を二つにわけ、それぞれを発達させるところから訓練をはじめる。
まずは純粋な裏声だけを取り出してみよう。

裏声を発達させる

アンザッツ 4

息漏れのある漂うような裏声

アンザッツ 4

どんな声?
ふくろうや犬の遠吠えのような声。

作用
胸骨甲状筋により喉頭、輪状甲状筋により喉仏の前部が引き下げられ、口蓋咽頭筋によって後部の喉頭(喉仏の後ろ)が引き上げられる。
後輪状披裂筋(後筋)によって声帯の間が開き、息が漏れるような声がする。

フースラーの日本語訳では「純粋な頭声」と書いている。

輪状甲状筋
主な目的
輪状甲状筋のストレッチ、裏声の独立。引き下げ筋を使う。
後筋による声帯の開大。息を漏らすことができる。
主な効果
音程のコントロール、高い声の安定、増進。

練習のやり方
ふくろうのような声で
♪Fuu〜

バリエーション
より息を漏らしてふくらみのある漂う声に。

アンザッツ 5 
支えのある裏声 
もののけ姫の歌のような声
アンザッツ 5

どんな声?
カウンターテナーのような声。

日本でいうともののけ姫で有名な米良氏ですね。
フースラーのドイツ語版ではこの音源がついております。

しっかりとした裏声だが、低域はあまりない。

作用
アンザッツ4とは反対に、甲状舌骨筋により喉頭が引きあげられ、喉仏が少し高くあげられる。
甲状舌骨筋による引き上げ。外側輪状披裂筋、横披裂筋による閉鎖。
声門は閉じても、その中央部に小さな楕円形の開きを残している。
つまり、完全に閉鎖はし切っていない。

主な目的
裏声でありながら、閉鎖をする。
いわゆるミックスボイスの手前の段階。

アンザッツ 5の声帯の動き

アンザッツ 6

 アンザッツ 6 フースラー
どんな声?
とても太い充実した裏声


声をうなじに当てるイメージ
作用
喉頭は下とさらに後方に引き下げられ、うしろにひっぱっている。

最高音域はこのアンザッツを使う。

声帯は「最大限に進展される」
正門はこの場合、すこし開いている。

注意点
このアンザッツ ばかり練習しているとどんな高音も出るだ喉っぽくなる。
声帯内筋は緩んでいるため、アンザッツ3aと併用して練習する。

地声を発達させる

アンザッツ 1    ハイラリンクスを利用し、閉鎖筋を働かせる基本的なやり方

アンザッツ 1


アンザッツ2   (閉鎖筋を働かせる安全なやり方)
喉頭が下に下がり、低音が増す。

声を胸骨の最上部、もしくは鎖骨の間に当てるイメージ
やはり声帯、声門の閉鎖を強くする。

喉頭を引き下げる筋を働かせるトレーニングになる。

アンザッツ3a
喉頭が下がった状態で高い倍音も入っていく。
鼻の付け根や仮面舞踏会などのマスクの中へ歌うとよくいわれる。
「充実した声」。

 

ブレンディング・レジスター 二つの声区を融合させる

アンザッツ3b
喉頭は引き上げ筋と引き下げ筋の両方が働き、中間的なポジション。
前述のアンザッツ 1とアンザッツ 5をつなぐ働き。

結果として声を上顎、軟口蓋の前部に当てるイメージ。
声門閉鎖が完全なものになるようだ。
3aとともに重要なアンザッツである。

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