正しい発声とは 〜ソース・フィルターモデル〜声帯編
山下勇介
ウォークオンミュージックスクール 代表 山下勇介
皆さんは、正しい発声について、誰かからこんなことを言われたことはありませんか?
「喉を開きなさい」
「喉締めるのをやめなさい」
「腹から声を出しなさい」
「鼻に響かせるように」
など抽象的な言葉たちです。
どの言葉も、ある側面では正しく、ある側面では間違いです。
なぜならば「喉」とは非常に広い部位だからです。「鼻が響く」とは複数の意味があります。(※指導者向け Nasalなのかプレイスメントなのか等)
そして何より腹から声は出ないからです。
上記の図の声帯(ソース)のコントロールができていない段階で、息のパワーをあげるのは喉を壊してしまいます。
(※甲子園や運動会の応援団、みんな声がガラガラではありませんか?)
当スクールでは「快適に、心地よく、遠くに届く声で、みなさんが表現したい声で自由に歌えること」が「正しい発声」だと思っております。
そのためボイストレーナーはもちろん、歌が上手くなりたい人たちは、
間違った方向へ行かないために、正しい知識を得る必要があると思います。
上記の図のように肺から出た息が、声帯(ソース)を振動し、そこから上の部分、声道(フィルター)にて調音(Articulation)します。
近年のメソッドでは、「息の量は最小限にして」まずはソース・フィルターの動きを練習していくことが多いのです。
この記事では声帯(ソース)の基本的な働きについて解説いたします。
●まずは声帯(ソース)の4つの働きを覚えよう
声帯を動かす筋肉は複数あり、複雑です。しかし、大きく分ければ4つの働きしかありません。
・「開く」と「閉じる」
・「縮む」と「引っ張る」
もっと詳細を知りたい人は今後、まとめた記事をアップしていきますのでそちらをご覧ください。
簡単にざっくり言うと、基本は上記の4つの動きしかありません。
●開く(開大)と閉じる(閉鎖)
肺から出た息が、声帯という2枚のヒダを通過します。
そのとき、声帯が開ききっていれば「呼吸」となり、
閉じていれば「声」になります。
閉じ具合によって「ささやき声(ウィスパーボイス)」となります。
声帯が開く運動のことを「開大」と呼び、後輪状披裂筋(PCA)という筋肉が働いています。
声帯が閉じる運動のことを「閉鎖」と呼び、外側輪状披裂筋(LCA)や横披裂筋などが働いています。
●縮む筋肉(TA)と引っ張る筋肉(CT)
●縮む筋肉(甲状披裂筋 TA、声帯内筋)
甲状披裂筋(TA)、声帯内筋など縮む筋肉を主に使うと、太く、地声のような声になる。
男性ボーカルサンプル
男性ボーカルサンプル
●引っ張る筋肉(輪状甲状筋 CT)
輪状甲状筋(CT)、甲状軟骨を前に倒し、引っ張る筋肉を主に使うと、細く裏声のような声になる。
男性ボーカルサンプル
男性ボーカルサンプル
●声帯(ソース)で作られる声のタイプはざっくり分けると4種類
ここまでの流れで
・「開く(息漏れのある声)」と「閉じる(息漏れのない声)」
・「縮む(地声)」と「引っ張る(裏声)」
という動きがあることがわかりました。
まとめると
地声
・息漏れのない地声(難易度★)
・息漏れのある地声(難易度★★)
裏声
・息漏れのある裏声(難易度★★)
・息漏れのない裏声(難易度★★★)
の4タイプがあります。
これらの声のトレーニングは別項目でも解説いたします。
ボイストレーニングで使われる声の種類として
チェストボイス、ヘッドボイス、ミックスボイス、ウィスパーボイス、 ベルティング、ボーカルフライなどあります。
基本的には上記の4タイプのうちのひとつであったり、組み合わせたり、ブレンドしたり、フィルターなどで変化させたものです。
まずは基本的な4タイプを練習していきましょう。
以上、声帯(ソース)についての解説でした。