ベルティング ✖️ ブレンディング

サビの高音を、もっと力強く歌いたい。地声らしい存在感を保ちたい。でも、声を張り上げると喉が苦しくなる――。そんな課題を考えるときに大切なのが、ベルティングの声質と、それを歌の中で使いこなすための発声の調整です。

この記事では、ベルティングの仕組みを整理し、当教室で取り組むブレンディング(レジストレーション)を組み合わせる意味を紹介します。目指すのは、一音だけの力強さから、音域や強弱が変わっても表現を続けられる歌声へ進むことです。

目次

ベルティングは、地声感のある力強い声の表現

ベルティングは、ミュージカルやポップスなどで使われる、明瞭で地声感のある力強い歌声です。言葉や感情を前に出したい場面で、声の存在感を生かせる表現の一つです。

ただし、大きな声であればすべてベルティングというわけではありません。声帯の振動と、響きに関わる声道の調整など、複数の働きが組み合わさって声質が生まれます。

低い地声を同じ感覚のまま高音へ押し上げることや、息の勢いだけで音量を増やすことを、練習の目標にしないようにしましょう。

ベルティングをつくる、発声の組み合わせ

声帯の振動――地声らしい充実感に関わる

ベルティングを説明する際には、声帯の厚みを保った振動が重要な要素になります。この「厚み」は声帯の振動状態に関する言葉で、喉を強く締めたり、声を重く押しつけたりする指示ではありません。

求める音の高さや音色に合わせ、声帯の振動と呼気のバランスを整えていきます。息漏れを減らそうとして、必要以上に声門を締めつけないことも大切です。

声道の調整――明るさや通りのよさに関わる

声帯で生まれた音は、喉や口などの声道を通ることで音色が変わります。ベルティングでは、声帯の上方にある喉頭入口部の狭まりや、比較的高い喉頭位置などが、声質を考える要素になります。

喉頭入口部の狭まりと、仮声帯で押しつぶすような締めつけは、区別して考える必要があります。また、喉頭を外から押したり、無理に持ち上げたりして形を再現しようとしないでください。実際の音と負担感を確かめながら、指導者と調整します。

身体の安定――発声を支える土台

力強い声を出すときには、頭・首や体幹を含めた身体の安定も関わります。全身を脱力しきることだけを目指すのではなく、発声に必要な働きを使いながら、顎や舌などの余分な力みを減らしていきます。

「必要な働き」と「過剰な締めつけ」を見分けるためにも、音量だけで判断せず、音程や音色、発声後の状態まで確認しましょう。

なぜブレンディングを組み合わせると効果的なのか

ベルティングの声質を一音で出せても、旋律の中で同じように扱えるとは限りません。高音の直前で声が重くなる、弱く歌うと急に裏声へ切り替わる、低い音へ戻ると声がつながらない、といった課題が残ることがあります。

そこで役立つのが、声区の使い方や調整を扱うレジストレーションの視点です。当教室では、輪状甲状筋と甲状披裂筋の働きをブレンドし、協調させていくという考え方で、ブレンディングに取り組みます。

ベルティングで声の力強さや音色を探り、ブレンディングで高さや強さの変化への対応を育てる。この二つを組み合わせることで、力強い声を曲の中で扱う練習につなげられる、というのが本記事での考え方です。組み合わせの効果や習得の進み方には個人差があります。

ブレンディングは、二つの筋肉の働きを協調させる練習

輪状甲状筋は、声帯を引き伸ばし、張りを調整する働きに関わります。甲状披裂筋は声帯内部にあり、声帯の厚みや硬さ、振動の状態などの調整に関わります。

当教室の「ブレンド」は、二つの筋肉の働くバランスを調整するという指導上の表現です。地声と裏声を半分ずつ混ぜることや、二つの筋肉を常に同じ強さで使うことを意味するわけではありません。

また、輪状甲状筋を裏声専用、甲状披裂筋を地声専用と単純に分けることもできません。声の高さや強さ、母音、響きなどの条件に合わせて、発声全体を調整していきます。

ミックスボイス 声区融合
ミックスボイス 声区融合

練習例① メッサ・ディ・ヴォーチェで、強弱をつなぐ

メッサ・ディ・ヴォーチェは、同じ音の高さを保ちながら、声を徐々に大きくし、その後、再び小さくしていく練習です。

当教室のブレンディングの練習では、その一例として「裏声 → ブレンド → 裏声」という流れを扱います。楽な高さの裏声から始め、音程を保ちながら声の充実感を加え、再び軽い裏声へ戻していきます。

ここで確かめたいのは、大きくすることだけでなく、再び小さく戻せることです。途中で音程が上がったり、喉を締めつけたり、音色が急に切り替わったりしないかを確認します。

これは当教室での練習の組み立て方です。メッサ・ディ・ヴォーチェ全般が、必ず裏声から始まり、ベルティングへ移るという意味ではありません。また、中央のブレンドした声が、そのままベルティングになるとは限りません。

メッサ・ディ・ヴォーチェ Walk On Prime

練習例② オクターブで、音域をつなぐ

もう一つの例が、オクターブの上下を使う練習です。

高いソ〈裏声〉 → 1オクターブ下のソ〈ローラリンクス・地声〉 → ブレンディングしながら高いソへ

最初の高いソでは軽い声の状態を確かめ、低いソでは喉頭を低めに保つローラリンクスの地声を扱います。その後、高いソへ戻る中で、声を低音の状態に固定せず、必要な調整を加えていきます。

ローラリンクスは、この練習の低い音で用いる設定です。高い音へ戻るときや、ベルティングを行うときにも喉頭を低く固定する、という意味ではありません。

ソの実際の高さは一人ひとりに合わせます。高いソが無理なく出せない場合は、ほかの音に移調して取り組みましょう。

ブレンディング ミックスボイス Walk On Prime

ブレンディングで得た調整を、ベルティングのフレーズへ

ブレンディングの練習で声の行き来を確かめたら、歌いたい曲の短いフレーズに戻ります。まず無理のないキーと音量でつながりを確認し、そこから求める力強さや音色を探します。

高音だけを切り離さず、その前後の音も含めて歌い、録音して聴いてみましょう。力強さを加えたときに音程が崩れないか、言葉が不明瞭にならないか、次の音へ戻れるかが確認のポイントです。

ベルティングを常に最大音量で使う必要はありません。フレーズのどこで存在感を出し、どこで軽さを選ぶかを考えることで、発声の練習を音楽表現へつなげていきます。

力強さと柔軟さを、両方育てる

ベルティングは、声帯の振動や響き、身体の働きを組み合わせてつくる声の表現です。そこにブレンディングを加えることで、声区や強弱の調整にも取り組み、曲の中で使える歌声を目指します。

喉の痛みや声のかすれが出たときは練習を中止し、不調が続く場合は耳鼻咽喉科に相談してください。音域や練習の強さを自分の声に合わせながら、力強さと柔軟さを育てていきましょう。

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